浮気調査から慰謝料請求まで|探偵と弁護士が連携する実際の流れ

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浮気調査から慰謝料請求まで|探偵と弁護士が連携する実際の流れ

証拠を取ったあと、何が起きるのか。誰に、いくら、いつまでに請求できるのか。先に地図を持っておけば、動き方が変わります。

編集部
そっと相談 浮気調査ナビ 編集部
探偵業法(警察庁)・国民生活センターの公表資料・裁判例を一次情報として確認しながら執筆しています
最終更新:2026年7月13日 / 本記事は探偵業法(警察庁)・国民生活センターの公表資料・裁判例を確認のうえ作成し、制度や相場の変更に応じて更新しています。
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この記事の結論

探偵と弁護士は、役割がまったく違います。探偵は事実を「取る」人。弁護士は、取った事実を「使う」人。探偵はあなたの代理人にはなれず、交渉も訴訟もできません。

そして、ほとんどの人が知らない実務のコツがあります。正しい順序は「探偵 → 弁護士」ではなく、「弁護士 → 探偵 → 弁護士」です。何の証拠が何回分必要かを先に確定させれば、調査時間が無駄にならず、費用が下がります。

慰謝料の相場は、離婚に至った場合で100万〜300万円、離婚しない場合で50万〜150万円、別居に至った場合で100万〜200万円が目安です。ただし個別事情で大きく変動します。

そして時効は、不貞の事実と相手を知った時から3年。妊娠・出産・育児で数年が過ぎることは、まったく珍しくありません。3年は、あなたが思っているより短い時間です。

証拠が取れたら終わり、ではありません。むしろ、そこからが本番です。──けれど、その「本番」がどういう形をしているのかを、事前に教えてくれる人はほとんどいません。探偵は調査までしか語らず、弁護士は証拠が揃ってからしか会ってくれない、と思い込んでいる方が多いからです。

この記事は、この浮気調査ナビの出口にあたる記事です。調査のあとに続く長い道のりを、一枚の地図として先に渡します。読んだうえで「やっぱり調査はしない」と決めるなら、それもひとつの正しい判断です。

  • 探偵と弁護士の役割分担と、依頼する順番を間違えると損をする理由
  • 慰謝料の相場・時効・請求先という、誰も正面から教えてくれない3つの数字
  • 探偵費用は相手に請求できるのか、弁護士費用で費用倒れになる境界はどこか
※本記事に記載した相場・期間は、弁護士の公開解説および裁判例の傾向に基づく一般的な目安です。実際の金額・結論は個別の事情により大きく異なります。本記事は情報提供を目的としたもので、法律相談ではありません。個別の判断は必ず弁護士にご確認ください。

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01結論:探偵と弁護士は役割がまったく違う。順番を間違えると損をする

法律事務所の机で思案する弁護士
探偵は事実を「取る」。弁護士は事実を「使う」。順番を間違えると損をします。

浮気を疑っている方の多くが、頭の中でこう考えています。「まず探偵に頼んで証拠を取る。証拠が揃ったら弁護士に相談する」。──これは、ごく自然な発想です。そして、実務上、必ずしも最適ではありません

理由はシンプルです。「どんな証拠が、何回分あれば、あなたの目的にとって十分なのか」を判断できるのは、探偵ではなく弁護士だからです。探偵は調査の専門家ですが、法廷でその証拠がどう評価されるかを最終判断する立場にはいません。逆に弁護士は法の専門家ですが、尾行も張り込みもできません。この二人は、まったく違う職業です

順番を間違えるとどうなるか。たとえば「離婚はしない。でも相手の女性には慰謝料を払わせたい」という目的の方が、それを言わないまま探偵に依頼したとします。探偵は良かれと思って調査回数を重ね、費用は膨らみます。ところが弁護士に見せたら、「この目的なら、この1回分の証拠で十分に交渉できました」と言われる。──払わなくてよかった数十万円が、後から見えてしまう。これが「順番を間違える」ということの実際の意味です。

この記事は法律相談ではありません

先に、はっきり書いておきます。この記事は、慰謝料請求の一般的な仕組みと相場を整理した情報です。法律相談ではありません。慰謝料の金額も、請求先の選び方も、離婚の可否も、すべてあなたの個別の事情によって結論が変わります。婚姻期間、子の有無、不貞の期間、すでに関係が破綻していたかどうか。同じ「浮気」でも、結論はまったく違うところに着地します。

ですから、この記事の役割は「答えを出すこと」ではなく、「あなたが弁護士に何を聞けばいいかを分かる状態にすること」です。地図を持たずに相談に行くと、何を聞けばいいかが分からないまま30分が終わります。地図を持っていれば、同じ30分で必要な判断材料が全部手に入ります。

この記事の使い方読み終えたら、気になった箇所をメモしてください。そのメモが、そのまま弁護士の無料相談で聞くべき質問リストになります。この記事は、弁護士の代わりではなく、弁護士に会う前の準備のためにあります。

02役割分担の全体像——探偵は「取る」、弁護士は「使う」

二人の職業を、思い切って一行に切り分けます。探偵は、事実を「取る」人。弁護士は、取った事実を「使う」人。この一本の線を頭に入れておくだけで、これから起こることの9割が整理できます。

探偵にできること・できないこと

探偵ができるのは、尾行・張り込み・撮影・聞き込みといった事実を確認する行為と、それをまとめた調査報告書の作成です。対象者がいつ、どこで、誰と、どのように行動したのか。それを客観的な記録として残すのが仕事です。

一方で、探偵は、あなたの代理人にはなれません。これは探偵の能力の問題ではなく、法制度の問題です。相手方と交渉すること、示談を取りまとめること、内容証明を代理人名義で送ること、調停や訴訟であなたの代わりに主張すること。これらはすべて弁護士の業務であり、探偵が行うことはできません。「うちで慰謝料の交渉までやりますよ」と言う業者がいたら、それはその時点で警戒すべきサインです。

弁護士にできること・できないこと

弁護士は、証拠を法的な文脈に置き直し、それを武器として使います。内容証明郵便の送付、相手方との交渉、示談書・合意書の作成、調停の申立て、訴訟の追行。あなたの代わりに、相手方の前に立ってくれる唯一の存在です。

ただし、弁護士は尾行も張り込みもしません。「証拠を取ってきてください」とは言えますが、取ってはくれません。証拠がない状態で相談すれば、「まず証拠を取ってきてください」という助言が返ってくるだけです。ここで多くの人が「弁護士は証拠がないと会ってくれない」と誤解しますが、実際は違います。証拠がない段階で相談する価値は、むしろ大きい。それが次のセクションの話です。

探偵と弁護士の役割分担 探偵=事実を「取る」 尾行・張り込み・撮影 調査報告書の作成 できないこと 相手方との交渉 示談・調停・訴訟の代理 弁護士=事実を「使う」 内容証明・交渉・示談 調停・訴訟の代理 できないこと 尾行・張り込み 証拠そのものの取得 証拠は探偵から弁護士へ渡される。逆方向には流れない

図1:探偵と弁護士は、まったく別の職業です。探偵は代理人になれません。「交渉までやります」と言う調査業者がいたら、その一言が危険信号です。

なぜ探偵は代理人になれないのか

交渉や訴訟の代理は、弁護士の独占業務とされています。理由は、依頼者を守るためです。相手方と金銭交渉をする行為には、専門的な判断と、厳格な職業倫理と、責任の所在が必要になります。資格のない第三者が交渉に入ると、依頼者が不利な合意をさせられるリスクが跳ね上がります。この制度は、探偵を縛るためではなく、あなたを守るためにあります。

ここは覚えておいてください「調査から慰謝料請求まで、うちで全部やります」──この売り文句は、法制度の枠組みからずれています。探偵は弁護士を紹介することはできますし、実際に提携している事務所も多くあります。しかし、探偵自身が交渉することはできません。

03【重要】理想的な順序は「弁護士に先に相談 → 探偵に依頼」

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。そして、ほとんどのサイトが書いていないことでもあります。

世の中の記事はたいてい「探偵 → 弁護士」の順で流れを説明します。しかし実務では、弁護士 → 探偵 → 弁護士という順序のほうが、費用を抑えられ、目的に届く確率も上がります。最初の「弁護士」は、たった1回、無料相談の30分でも構いません。それだけで、調査の設計が変わります。

先に弁護士に相談すると、何が変わるのか

探偵に依頼するとき、あなたは「どのくらい調査してもらえばいいのか」を自分では判断できません。判断できないから、探偵の提案する時間数をそのまま受け入れます。これは探偵が悪いのではありません。探偵の側も、あなたの目的(離婚したいのか、したくないのか、誰に請求したいのか)を正確に知らされないまま、「一般的に十分と言われる水準」を提案するしかないからです。

ところが、先に弁護士に会って目的を伝えておくと、この会話が可能になります。「離婚はせず、不倫相手にだけ慰謝料を請求したい。この目的なら、どの程度の証拠が必要ですか」。弁護士から「この目的なら、ホテルへの出入りが確認できる回数がこのくらいあれば交渉に入れます」という具体的な線が返ってきます。その線を持って探偵に行けば、調査の設計はまったく変わります。

よくある順序と、費用が下がる順序の比較 よくある順序(費用が膨らみやすい) 探偵に依頼 調査・報告書 弁護士に相談 必要量が分からないまま調査するので、過不足が出る 費用が下がる順序(弁護士を先に挟む) 弁護士に 方針相談 必要な証拠の 量が確定 探偵に依頼 (時間を絞れる) 弁護士へ 報告書を渡す 最初の30分の無料相談が、数十万円の差になることがある

図2:発想を逆にしてください。探偵が先ではなく、弁護士が先です。目的と必要証拠量を先に確定させてから調査に入ると、調査時間の空振りが減り、総額が下がる可能性があります。

「証拠がないと弁護士に相談できない」は誤解

多くの方が、証拠がまったくない状態で弁護士に会うのは失礼だ、門前払いされる、と思い込んでいます。実際には、離婚分野を扱う弁護士事務所の多くが初回無料相談を用意しており、証拠がない段階での「方針相談」も受け付けています。そこで聞くべきことは決まっています。「私の目的は◯◯です。何がどれだけあれば、その目的に届きますか」──この1問です。

もうひとつ、調査費用を実際に押し下げる要素があります。それは、依頼前の準備です。対象者の行動パターンを事前に把握しておけば、探偵が張り込む日と時間を絞り込めます。空振りの調査日が減れば、そのぶん総額は下がります。この点は、探偵に依頼する前の行動記録の作り方と調査時間を圧縮する準備で具体的な記録の付け方まで整理しています。弁護士から必要な証拠の水準を聞き、行動記録で調査日を絞る。この2つが揃うと、調査は最短距離になります。

最初の30分で聞くべき3つ①この目的なら、どの程度の証拠があれば足りますか ②私のケースで、慰謝料の見通しはどのくらいですか ③時効はいつまでですか。この3問の答えを持って探偵の相談に行けば、あなたは「何を買うのか」を分かったうえで見積もりを見ることができます。

04浮気調査から慰謝料請求までの全体の流れ7ステップ

弁護士事務所で依頼者と打ち合わせをする様子
理想の順序は、弁護士に先に相談してから探偵に依頼すること。必要な証拠の量が先に決まります。

ここで、全体の地図を広げます。疑いを持った日から、慰謝料が手元に入る(あるいは入らない)日まで、実際には何が起きるのか。7つのステップに分けて、順に見ていきます。

1
弁護士に方針相談(無料相談で可)目的を決める段階です。離婚したいのか、したくないのか。誰に請求したいのか。この時点では証拠は要りません。必要な証拠の種類と量、慰謝料の見通し、時効の残り時間。この3つを聞きます。所要時間は30分〜1時間。
2
行動記録をつける(1ヶ月程度)対象者の帰宅時間、外出パターン、車の使用、休日の動き。これを記録します。探偵が張り込む日を絞り込むための材料であり、調査時間を圧縮する最も効果的な準備です。ここを飛ばすと、調査の空振りが増えます。
3
探偵に相談・見積もり(無料相談で可)行動記録を持って複数社に相談します。総額はいくらか、追加料金の条件は何か、探偵業の届出番号はあるか。契約前には重要事項説明書面が交付され、契約時には契約書面が交付されます。これは探偵業法上の義務です。
4
調査の実施尾行・張り込み・撮影が行われます。有効な証拠とされるのは、ホテルへの出入りの写真(入る時点と出る時点の2点)と、それが複数回にわたって記録されていることです。1回だけ、あるいは入る場面だけ、では立証力が落ちます。
5
調査報告書の受領撮影日時、場所、対象者の行動が時系列で記録された書面を受け取ります。この報告書は自動的に証拠になるわけではありません。撮影時刻が不明、顔が不鮮明、主観的な記述が多いといった報告書は、証拠としての価値が下がります。
6
弁護士に報告書を渡すここで再び弁護士です。報告書を見せ、「この内容で請求できるか」「足りない部分はどこか」を判断してもらいます。ステップ1で会っている弁護士なら、話は早い。ここが「弁護士 → 探偵 → 弁護士」の3周目です。
7
請求・交渉・調停・訴訟内容証明の送付から始まり、話し合いで決着すれば示談書を交わします。まとまらなければ調停、それでも決着しなければ訴訟。多くのケースは訴訟の前段階で終わりますが、そこに至るまで数ヶ月から1年以上かかることもあります。
浮気調査から慰謝料請求までの時系列 1 弁護士 方針相談 2 自分 行動記録 約1ヶ月 3 探偵 相談・見積 4 探偵 調査 5 探偵 報告書 6 弁護士 証拠の確認 7 弁護士 請求・交渉 弁護士 探偵 弁護士 → 探偵 → 弁護士。弁護士は2回登場します 全体の所要期間は、数ヶ月から1年以上かかることもあります

図3:7ステップの時系列。注目してほしいのは、弁護士が最初と最後の2回登場することです。多くの人は最後の1回しか使っていません。

05慰謝料の相場——離婚あり100〜300万円、離婚なし50〜150万円

お金の話をします。曖昧にせず、数字を出します。ただし、この数字は目安であり、あなたのケースの答えではありません。そこだけは、先に念を押させてください。

その後の夫婦関係慰謝料の相場(目安)考え方
離婚に至った場合100万〜300万円婚姻関係そのものが破壊されたと評価されるため、最も高くなる傾向
別居に至った場合100万〜200万円離婚には至っていないが、共同生活が壊れた損害が評価される
離婚しない場合
(婚姻継続)
50万〜150万円婚姻関係が維持されているため、離婚の場合より低くなる傾向

表を見て、「思ったより低い」と感じた方が多いのではないでしょうか。テレビや週刊誌で目にする「不倫の慰謝料◯千万円」は、著名人の事案や、極めて特殊な事情がある事案です。一般的な家庭の不貞の慰謝料は、この表の範囲に収まることが多いのが実際です。

この「思ったより低い」という感覚は、実はとても重要です。なぜなら、慰謝料の見込み額と、調査費用・弁護士費用の合計を並べたときに、収支が合わないケースがあるからです。この点はセクション10で正面から扱います。

慰謝料相場の幅 0万円 100万円 200万円 300万円 離婚あり 100万〜300万円 別居あり 100万〜200万円 離婚なし 50万〜150万円

図4:慰謝料相場の幅(目安)。夫婦関係がその後どうなったかで、金額の層が変わります。ただしこれは統計的な傾向であり、個別の事案では上下します。

そもそも「不貞行為」とは何を指すのか

ここも、誤解が非常に多い箇所です。法律上の不貞行為とは、配偶者以外の人と、自由な意思にもとづいて肉体関係を持つことを指します。民法770条が定める離婚事由のひとつです。

つまり、二人で食事をしただけ、手をつないだだけ、キスをしただけでは、法律上の不貞行為には当たりません。感情的には十分すぎるほど裏切りであっても、慰謝料請求の根拠としての「不貞行為」には届かない。これは、多くの方が最初に直面する、冷たい現実です。

だからこそ、証拠の性質が決定的に効いてきます。ホテルへ二人で入り、数時間後に出てくる。その2点が写真で押さえられていて、それが複数回にわたって記録されている。この形が、肉体関係の存在を推認させる証拠として重視されます。ただし、報告書があれば必ず認められるというわけではありません。どういう報告書が証拠として通用し、どういう報告書が価値を落とすのかは、探偵の調査報告書が裁判で証拠として通用する条件にチェック項目まで落とし込んで書いています。調査を依頼する前に、一度目を通しておく価値があります。

感情と法律のあいだにある溝「キスの写真があるのに、不貞行為にならないなんて」と感じるのは、当然です。法律は、あなたの痛みの大きさではなく、立証できる事実の型で動きます。この溝を先に知っておくことが、後の失望を減らします。

06慰謝料が増額されうる事情/減額されうる事情

相場に幅があるのは、個別の事情によって金額が上下するからです。何が上げ、何が下げるのか。ここを知っておくと、自分のケースがどのあたりに着地しそうか、おおまかな見当がつきます。

増額されうる事情減額されうる事情
婚姻期間が長い婚姻期間が短い
不貞の期間が長い、回数が多い不貞が短期間・少数回にとどまる
未成年の子がいる子がいない
不貞が原因で離婚・別居に至った不貞の前からすでに婚姻関係が破綻していた
不貞の態様が悪質(発覚後も継続、開き直りなど)不貞相手が既婚であることを知らなかった(過失もない場合)
精神的苦痛が大きい(うつ状態の診断など)請求する側にも婚姻破綻の責任がある
不貞相手が妊娠・出産しているすでに一定の金銭を受け取っている

最も強く効く減額事由は「すでに破綻していた」

この表の中で、実務上いちばん激しく争われるのが「不貞行為の時点で、すでに婚姻関係が破綻していたかどうか」です。もし関係がすでに破綻していたと認められると、慰謝料が大幅に減額されるか、場合によっては請求そのものが認められない可能性があります。

なぜか。慰謝料の根拠は「平穏な婚姻共同生活を壊された」という損害だからです。壊れる前からすでに壊れていたなら、壊した責任を問えない、という理屈です。だから相手方(特に不倫相手側)は、「二人はもう夫婦として終わっていた」「別居していた」「家庭内別居状態だった」と主張してきます。これは、慰謝料請求で最も頻繁に出てくる反論です

増額を狙って証拠を積み増すことが、常に得とは限らない

ここで、逆説をひとつ。「証拠が多いほど慰謝料が上がるなら、調査回数を増やせばいい」と考えたくなります。しかし、調査を1回追加するごとに、数万円から十数万円の費用がかかります。それによって慰謝料が確実にその金額以上増えるという保証は、どこにもありません。

増額要素の多くは、婚姻期間や子の有無といった、調査では変えられない事情です。調査で積み増せるのは「不貞の回数・期間」の部分に限られます。ここに、費用対効果の限界があります。だからこそ、セクション03で書いた「弁護士に必要量を先に聞く」ことが効いてくるのです。

冷静に見ておくべき比率調査を10時間追加して20万円かけたとして、慰謝料が20万円以上増える保証はありません。むしろ「交渉のテーブルに着くのに必要な最低ラインを、確実に超える」ことのほうが、費用対効果としては合理的です。

07【重要】時効は「知った時から3年」。3年は、思っているより短い

離婚に関する書類に署名する手元
時効は「知った時から3年」。妊娠・出産・育児で数年が過ぎるのは、珍しくありません。

このセクションだけは、今日この記事を閉じたあとも覚えておいてください。慰謝料請求には、時効があります

不貞行為にもとづく慰謝料請求権は、①損害および加害者を知った時から3年、または②不法行為の時から20年のいずれかが経過すると、時効により請求できなくなり得ます。実務上ほとんどのケースで問題になるのは、①の「3年」のほうです。

慰謝料請求権の時効 起算点は「不貞の事実」と「相手が誰か」の両方を知った時 そこから 3 年で時効 相手が誰か分からない場合 不法行為の時から20年が上限 ただし相手を知った時点で3年が動き出す 妊娠・出産・育児で数年経つケース 「動けるようになった頃には時効間近」 これは決して珍しくありません

図5:時効の起算点。「知った時」から3年です。疑い始めた時ではなく、不貞の事実と相手を知った時が起点になります。ただし個別の起算点の判断は微妙な問題を含むため、必ず弁護士に確認してください。

なぜ「3年」が現実には短いのか

数字だけ見れば、3年は長く感じます。しかし、浮気を知った直後の人生に、実際に何が起きるかを考えてみてください。

妊娠中に夫の浮気を知った方が、そこから出産し、産後の身体を立て直し、夜泣きに耐え、育休を終えて職場に戻る。ここまでで、あっという間に2年から3年が経ちます。「ようやく気持ちが落ち着いて、慰謝料のことを考えられるようになった」その時点で、時効が目前に迫っている。──これは、まったく珍しい話ではありません。

あるいは、証拠がないまま何年も悩み続けた方。相手を問い詰めては否定され、また疑い、また問い詰める。その繰り返しで時間が過ぎていく。動けない期間があるのは、あなたが弱いからではありません。しかし、あなたが動けないあいだも、時効の時計は止まりません。それだけは、正直に伝えなければなりません。

時効が迫っているときにできること

時効が近い場合、進行を一時的に止める(完成を猶予する)法的な手段があります。代表的なのは、内容証明郵便による催告や、裁判上の請求です。ただし、これらには要件があり、効果の及ぶ範囲も限られます。「内容証明を送れば時効は止まる」と単純に理解するのは危険です。

時効が近いと感じたら、証拠が揃っているかどうかにかかわらず、まず弁護士に相談してください。「あと数ヶ月しかない」という状況で最初にやるべきことは、調査の依頼ではなく、時効を止める手当てである可能性があります。ここは、この記事で判断できる領域ではありません。

時効について、この記事で言えることの限界時効の起算点(いつから3年が始まるのか)は、実際には微妙な判断を含みます。「うすうす感づいていた時」なのか「決定的に知った時」なのか。ここは事案ごとに違います。時効が心配な方は、この記事を根拠に自己判断せず、必ず弁護士に確認してください。

08請求先は2つある——配偶者と不倫相手。ただし二重取りはできない

慰謝料は、誰に請求できるのか。答えは、配偶者にも、不倫相手にも、どちらにも請求できます。二人が共同で不法行為を行った(共同不法行為)と評価されるためです。

ただし、ここから先が複雑です。そしてこの記事で完結できる話ではありません。先に結論を書いておきます。請求先の設計は、弁護士と一緒に決めてください。

二重取りはできない

まず押さえるべき原則です。慰謝料の総額が仮に200万円と評価されるケースで、配偶者から200万円、不倫相手からも200万円、合計400万円を受け取る──ということはできません。損害は一つだからです。二人は、その一つの損害について連帯して責任を負う関係にあります。片方が全額を払えば、もう片方に対する請求権は消えます。

求償という、知らないと驚く仕組み

ここが、多くの人が知らずに驚く部分です。不倫相手にだけ全額を請求し、相手がそれを支払った場合、その不倫相手は、あなたの配偶者に対して「自分の負担分を超えて払った分」を請求できる可能性があります。これを求償といいます。

何が起きるか。あなたが不倫相手から200万円を回収したとします。ところが不倫相手が配偶者に対して求償し、配偶者が100万円を支払う。もしあなたが配偶者と同じ家計で生活しているなら──その100万円は、実質的にあなたの家計から出ていくことになります。手元に残るのは、差し引き100万円。「200万円取ったはずなのに」という結末です。

不倫相手への全額請求と求償の流れ あなた 不倫相手 配偶者 全額を請求(例:200万円) 求償(負担分を返せ) 同じ家計なら実質的に負担 離婚しない場合、この循環で手元に残る金額が目減りすることがあります

図6:求償の循環。婚姻を継続する予定なら、不倫相手だけに全額を請求する戦略は、実質的な手取りを減らす可能性があります。ここは必ず弁護士と設計してください。

求償権を放棄させるという実務

この問題への対処として、実務では示談の条件に「求償権の放棄」を盛り込むという手法が使われることがあります。つまり、不倫相手に「あなたの配偶者には求償しません」と約束させたうえで示談する。当然、その分だけ示談金額は低めに調整されるのが通常です。

こうした設計ができるのは、弁護士だけです。条項の書き方ひとつで、手元に残る金額が変わります。ここを素人が自力で処理しようとするのは、率直に言って危険です。この記事は、この論点の存在を知ってもらうためにあります。答えは、弁護士と一緒に出してください。

正直に書きます請求先の設計は、この記事で扱える範囲を超えています。離婚するのかしないのか、配偶者と不倫相手のどちらから取るのか、求償をどう封じるのか。これらは相互に絡み合っており、一般論で答えを出すことができません。ここだけは、必ず弁護士に相談してください。
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09探偵費用は相手に請求できるのか——期待しすぎない現実

50万円前後を払って調査を依頼するなら、「その費用は相手に払わせられるのか」は当然の疑問です。ここは、期待させすぎないように、正直に書きます

結論から言えば、調査費用が損害の一部として認められる場合はあります。ただし、全額が認められるとは限らず、「相当な範囲」に限定される傾向があります

なぜ全額は認められにくいのか

考え方はこうです。不貞行為を立証するために調査が必要だったのなら、その調査費用は不法行為と因果関係のある損害だと言える。ここまでは自然です。しかし、では50時間の調査が本当に必要だったのか、20時間で足りたのではないか──という問いが立ちます。裁判所は「必要かつ相当な範囲」を切り出します

したがって、100万円の調査費用をかけたとしても、そのうち一部だけが損害として認められる、という結論になり得ます。「調査費用は全部相手に払わせればいい」と考えて予算を組むのは、危険な計画です。

認められやすい傾向認められにくい傾向
調査が不貞の立証に実際に役立った調査結果が請求に使われていない
調査の範囲・時間が目的に対して合理的過剰に長時間・高額な調査
他に立証手段がなかった本人が容易に取得できた証拠だった
費用の額が社会通念上、相当な範囲相場を大きく上回る費用

現実的な予算の立て方

では、どう考えればいいのか。「調査費用は、自分が負担するものとして予算を立てる。相手に一部でも認められたら、それは上振れ」──この構え方が、いちばん現実的です。回収を前提に予算を組むと、認められなかったときに家計が崩れます。

特に、子どもがいて生活費に不安がある状況で調査費用を捻出しようとしている方は、この点をシビアに見る必要があります。子供がいて生活費が心配なときに調査費用をどう考えるかでは、回収できる条件と回収できないケース、予算内に収める現実的な方法を整理しています。お金の不安が先に立っている方は、調査を決める前にそちらを読んでください。

この記事が言えること/言えないこと「調査費用は認められる場合がある」──ここまでは一般論として言えます。「あなたのケースでいくら認められるか」は、この記事では絶対に言えません。相場を大きく超える調査を「どうせ相手に払わせるから」という理由で契約するのは、避けてください。

10弁護士費用の目安と、費用倒れのリスク

ここも、多くのサイトが曖昧にする部分です。数字で正直に語ります。慰謝料請求は、費用倒れになることがあります

弁護士費用の基本構造

弁護士費用は、おおまかに次の要素で構成されます。事務所によって設定は異なり、これはあくまで構造の説明です。

費目内容発生タイミング
相談料初回無料の事務所が多い。有料でも30分程度の設定が一般的相談時
着手金依頼した時点で発生する。結果に関係なく戻らないのが原則依頼時
報酬金回収できた金額に応じて発生する成功報酬解決時
実費郵便代、印紙代、交通費など随時

重要なのは着手金です。これは結果が出なくても戻りません。慰謝料が1円も取れなかった場合でも、着手金は支払い済みのままです。「成功報酬だけの事務所」を選ぶという選択肢もありますが、その場合は報酬金の割合が高めに設定されるのが通常です。どこかで必ず、リスクは配分されます

費用倒れが起きる構造

計算してみます。仮に、離婚せず不倫相手に慰謝料を請求し、示談で80万円を回収できたとします。ここから、弁護士の着手金と報酬金を支払う。さらに、その前段階で調査費用として50万円前後を支払っている。

──合計すると、手元にほとんど残らない、あるいはマイナスになる可能性が見えてきます。これが費用倒れです。慰謝料の相場が「思ったより低い」ことと、調査費用が「思ったより高い」ことが、正面からぶつかる場所です。

費用倒れが起きる構造 費用倒れになりやすい 慰謝料の見込みが小さい (離婚せず・短期間の不貞) 調査に長時間かけた 相手に支払能力がない 収支が合いやすい 離婚を伴い、財産分与・ 養育費も同時に設計する 調査時間を絞り込めた 相手に支払能力がある この見極めを、無料相談で先に聞いてください

図7:費用倒れは、慰謝料の見込みが小さいのに調査費用が大きいときに起きます。この見立ては、弁護士の無料相談で率直に聞けます。「私のケースは費用倒れになりませんか」と聞いてください。

相手に支払能力がなければ、判決が出ても回収できない

もうひとつ、見落とされがちな現実があります。裁判で勝って「200万円を支払え」という判決を得ても、相手にお金がなければ、実際には回収できません。相手が無職である、財産がない、行方が分からない。こうしたケースでは、判決という紙は手に入っても、現金は手に入りません。

これは冷たい話ですが、事実です。慰謝料請求は「正しさを証明する手続き」であると同時に「お金を回収する手続き」であり、後者には相手の資力という壁があります。相談の時点で、この点も率直に聞いてください。

無料相談で聞くべき、いちばん重要な一言「私のケースで、慰謝料の見込み額と、調査費用・弁護士費用の合計を並べたとき、収支はどうなりそうですか」──この質問に、まっすぐ答えてくれる弁護士を選んでください。「やってみないと分かりません」としか言わない事務所より、「このケースは費用倒れの可能性が高いので、慎重に考えたほうがいい」と言ってくれる事務所のほうが、信頼できます。

11離婚するか、しないかで、必要な証拠と戦略が変わる

天秤と法槌が置かれた法律事務所の机
報告書は素材にすぎません。実際に慰謝料を取るのは、弁護士の仕事です。

ここまで読んで、気づいた方もいるはずです。「離婚するかどうか」が、すべての設計の分岐点になっている。慰謝料の相場も、請求先の設計も、費用倒れのリスクも、この一点で景色が変わります。

そして、いま決められなくても構いません。決めていない、という状態のまま弁護士に相談しても、まったく問題ありません。むしろ「決められない」ことを伝えたうえで、両方のシナリオの見通しを聞くのが、いちばん実務的です。

離婚する場合:慰謝料は、設計する項目の一つにすぎない

離婚を選ぶなら、慰謝料だけを見ていては損をします。離婚には、同時に決めるべき項目が複数あります。財産分与、養育費、親権、面会交流、年金分割。これらは慰謝料とは別の枠組みで動き、金額としてはむしろ財産分与や養育費のほうが大きくなることも珍しくありません。

つまり、離婚を伴うケースでは、慰謝料が100万円台であっても、全体としては収支が合う可能性があります。逆に言えば、慰謝料だけを切り離して考えると、判断を誤ります。この全体設計ができるのが、弁護士に依頼する最大の価値です。

離婚しない場合:形に残すのは「誓約書」と「示談書」

婚姻を続けると決めた場合、目的は「関係を再構築すること」になります。それでも、口約束だけで終わらせるのは危険です。不倫相手との示談書(二度と接触しない旨と、違反時の違約金を定める)と、配偶者との誓約書という形で残すのが、実務上の定番です。

これらは、金銭を取ることが目的ではありません。再発を抑止し、万一の再発時に立証を容易にしておくことが目的です。「もし再び関係を持ったら、その時点で離婚し、慰謝料として◯◯万円を支払う」といった条項を入れておくことで、次に何かあったときの立場がまったく変わります。

証拠を掴んだ直後の行動が、その後を左右する

最後に、順序について。証拠を手にした瞬間、多くの人が同じ行動を取ります。──相手に突きつけて、問い詰める。感情としては、これ以上ないほど自然です。しかし戦略としては、最も損をしやすい動き方でもあります。

証拠を先に見せてしまうと、相手は「何を握られているか」を正確に知ります。そこから証拠隠滅、口裏合わせ、財産の移動が始まることがあります。証拠は交渉のカードであり、先に出すほど価値が下がる。この順序の問題については、浮気の証拠を掴んだあとの切り出し方と問い詰める前にやる3つのことで具体的に整理しました。証拠が手元にある方、あるいは近いうちに手に入りそうな方は、必ず先に読んでおいてください。

離婚するか決まっていない人へ「決めてから相談しなければ」と思う必要はありません。弁護士の無料相談では、「離婚した場合」と「しなかった場合」の両方の見通しを聞けます。両方を聞いてから決める。それがいちばん、後悔の少ない順序です。

12まず、どちらに先に相談すればいいのか

最後に、この記事の全体を、たった一つの分岐に落とします。いま、あなたの手元に証拠はありますか

どちらに先に相談すべきかの分岐 証拠は手元にありますか まったくない 少しはある 探偵の無料相談へ 聞くこと: 「私の状況で、調査は そもそも成立しますか」 総額と成功の定義も確認 弁護士の無料相談へ 聞くこと: 「この証拠で足りますか。 足りないなら何が要りますか」 時効と費用倒れも確認 どちらも無料相談があります。両方使って構いません

図8:入口の分岐。証拠がゼロなら探偵に「調査が成立するか」を、証拠が少しでもあるなら弁護士に「これで足りるか」を聞く。迷ったら両方に聞いてください。無料相談を2つ使うことに、何の遠慮も要りません。

証拠がまったくない場合:探偵の無料相談で「調査が成立するか」を聞く

相手の名前も分からない、いつ会っているのかも分からない、ただ様子がおかしいだけ。──この段階なら、まず探偵の無料相談です。聞くべきことは一つ。「私の状況で、そもそも調査は成立しますか」

対象者の生活動線がまったく掴めていない場合、調査は空振りになりやすく、費用だけがかさみます。誠実な探偵なら、そのことを正直に言います。「まず1ヶ月、行動を記録してから来てください」と言われたら、それはあなたのお金を守るための助言です。売上を優先するなら、そんなことは言いません。

無料相談で何をどこまで聞けるのか、しつこい勧誘を受けないためにどう断ればいいのかは、探偵の無料相談で聞けることと勧誘されない相談の仕方にまとめています。相談の電話をかける前に、聞くべき質問リストを手元に用意しておいてください。

証拠が少しでもある場合:弁護士に「これで足りるか」を聞く

ホテルの写真がある、メッセージのやり取りを保存してある、本人が一度認めた録音がある。──何かしら手元にあるなら、弁護士の無料相談です。聞くべきことは、「これで足りますか。足りないなら、あと何が必要ですか」

ここで「足ります」という答えが返ってきたら、探偵に依頼する必要そのものがなくなる可能性があります。50万円が浮くということです。この記事が探偵事務所のサイトなら、絶対に書けない一文でしょう。しかし、これが事実です。

両方の無料相談を使ってよい

最後に、遠慮している方へ。探偵の無料相談も、弁護士の無料相談も、両方使って構いません。それぞれ別のことを教えてくれます。探偵は「証拠が取れそうか」を、弁護士は「その証拠で何ができるか」を。両方の答えを持って初めて、あなたは自分のケースの全体像を見ることができます。

そして、両方に相談したうえで「今回は動かない」と決めるのも、正しい判断のひとつです。相談したからといって、依頼する義務は一切ありません。ただ、時効の3年だけは、あなたが動かないあいだも進み続けます。それだけは、忘れないでください。

13探偵費用の請求は、思っているほど通らない——裁判例で確認する

セクション09では「期待しすぎない」と書きました。ここでは、請求の実務としてどうなっているのかを、公表された裁判例の数字で確認します。請求書に何を書き、どこで削られるのか。その現実を知っておくことは、請求の組み立てそのものを左右します。

東京高等裁判所 令和6年1月17日判決——230万5,918円が、全額否定された

この判決は、探偵費用の請求を考えるうえで避けて通れないものです。原告が支払った調査費用230万5,918円について、東京高裁はその全額を損害として認めませんでした。原審である東京地方裁判所 令和5年2月22日判決は、約7か月の調査のうち不貞関係が認められた期間は約2か月であるとして、調査費用のうち約60万円を相当因果関係のある損害と認定していました。高裁は、その60万円も取り消しています。

判決が示した理由は、要旨、次のようなものです。調査会社による調査は主として不貞行為の証拠収集を目的として行われるものであり、配偶者に不貞に関する疑いが生じた場合、直ちに調査会社による調査を利用することが一般的であるとまでは認められない。また、調査会社にどの範囲で調査を命じるかが一義的に明らかともいえない。したがって、その費用は不貞行為から通常生ずべき損害であるということはできない——。

さらにこの事案では、二人が人目のある場所で親密な行動を取っていた等の事情から、「調査会社による調査を利用しなければ不貞行為を知ることができなかったとまでは認められない」として、特別損害としての予見可能性も否定されました。

請求の実務として、これが意味すること調査費用は「請求書に載せれば通る費目」ではありません。載せても、まるごと削られることがある。230万円を払い、認められたのは0円。これが実際に起きています。請求の設計にあたっては、調査費用を回収できる前提を置かないことが安全です。個別の事案により結論は異なります。判断は弁護士にご確認ください。

令和期の東京地裁でも、否定例は複数ある

高裁だけの例外的判断ではありません。令和4年から令和6年にかけての東京地裁の判決を見ても、調査費用の請求が全額否定された例が複数存在します。請求額594万円で認容0円、266万円で0円、254万円で0円、220万円で0円——という判断が実際にあります。示された理由は、「どの証拠をどのように収集するかは原告の判断に委ねられる」「他に有力な証拠が複数あり、調査会社の利用が不可欠とまではいえない」「同居の事実は他の証拠で確認済みで、本人も認めていた」といったものです。

認められた例もありますが、認容額は請求額の2〜3割程度にとどまることが多いのが実情です。110万円の請求に対し33万円、79万円に対し20万円、67万円に対し15万円、175万円に対し30万円、49万円に対し10万円——といった判断が並びます。実務上の中心値は、おおむね10万〜30万円程度と整理されています。

分水嶺は「その調査が必要だったと言える状況か」

認められた方向の事案否定された方向の事案
本人に問いただしたが否定されたため調査に踏み切った(東京地裁 平成28年2月16日判決/37万円が全額認容)問いただしたこともなく、相手が当初から不貞を認めていた(東京地裁 平成22年2月23日判決)
相手が不貞を否定し、手元の証拠が手帳の記載のみで、調査がなければ立証できなかった(東京地裁 平成23年12月28日判決/一部認容)配偶者のSNSに密会に関する投稿があり、すでに把握できていた(東京地裁 平成22年12月21日判決)
誓約書作成後の不貞継続を立証する必要性が高かった(高額の一部認容例あり)他に有力な証拠が複数あり、調査会社の利用が不可欠とはいえない(令和期の複数の否定例)

そしてもうひとつ、請求額と認容率には傾向があります。支払った額が小さいほど、認められる割合は高くなりやすい。46万円のうち25万円が認められた例がある一方、594万円が全額否定された例がある。裁判所が見るのは「必要かつ相当だったか」であり、相当性の実質は金額の妥当性だからです。長時間パックを積み増すほど、回収比率は下がりやすくなります。

示談の段階では、まず通らないと考えておく

もうひとつ、請求の実務として押さえておくべきことがあります。慰謝料を請求された側の弁護士は、「相手が要求する調査費用は基本的に断ってよい」という趣旨の助言を、公開の解説記事で明確に行っています。示談交渉の場で、相手方に代理人が付いていれば、調査費用の上乗せは高い確率で拒まれると考えておくのが現実的です。

では裁判まで行けばいいのか、というと、そこにも壁があります。裁判にすれば弁護士費用がかかりますが、判決で相手方に負担させられる弁護士費用は、実際にかかった額のごく一部(認容額の1割程度)にとどまるのが通例とされています。調査費用を取り返すために訴訟を起こした結果、弁護士費用の持ち出しで赤字になる——という展開は、十分に起こり得ます。

この記事が言えること/言えないことここに挙げたのは公表された裁判例です。あなたのケースで調査費用がいくら認められるかは、この記事には書けません。調査の必要性・相当性は、証拠の状況、相手の対応、慰謝料額との均衡など多くの要素で変わります。個別の事案により結論は異なります。判断は弁護士にご確認ください。

14相手が「既婚者だと知らなかった」と主張したら

請求を始めると、かなりの確率でこの主張が返ってきます。「既婚者だとは知りませんでした」。これは言い逃れの決まり文句ではありません。法的に、正面から効く主張です。ここを理解していないと、請求そのものが空振りに終わります。

請求先は2人。ただし「不倫相手への請求」には要件がある

セクション08で書いたとおり、請求先は配偶者と不倫相手の2人います。しかし、この2つは同じ性質の請求ではありません。配偶者に対する請求は、貞操義務違反という婚姻関係上の義務違反を根拠とします。一方、不倫相手に対する請求は、不法行為を根拠とし、そこには「故意または過失」という要件があります

具体的には、不倫相手が婚姻の事実を知っていた(故意)か、知らなかったことについて落ち度があった(過失)か。このどちらかが認められて初めて、不倫相手に対する請求が成り立ちます。逆に言えば、婚姻の事実を知らず、知らなかったことに過失もなかったと判断されれば、不倫相手への請求は認められません。慰謝料はゼロになります。配偶者への請求は残りますが、不倫相手に対する請求は成り立たなくなるのです。

相手方の弁護士は、これを公然と指導している慰謝料を請求された側を扱う弁護士は、公開の解説記事で「既婚者だと知らなかったのであれば、支払う必要はない」という趣旨の助言を明確に行っています。これは違法でも不当でもありません。要件が満たされていない請求は通らない、という法律の建て付けをそのまま説明しているだけです。あなたが請求する側に立つなら、この主張が来ることを最初から織り込んでおく必要があります。

だからこそ「知っていた/知り得た」ことを示す材料が要る

この主張に備えるには、不倫相手が婚姻の事実を知っていた、あるいは知り得る状況にあったと示せる材料を、あらかじめ確保しておくことになります。実務上、材料になり得るのは次のようなものです。

材料何を示すか
やり取りの記録(メッセージなど)で、家庭・配偶者・子の話題が出ている婚姻の事実を認識していたことを直接うかがわせる
同じ職場・取引先など、家族構成が周知されうる関係知らなかったとは考えにくい状況だったこと
結婚指輪を日常的に着けていた知り得る状況にあったこと(=過失の評価に効く)
自宅に来たことがある、家族の話を聞いていた認識または容易に認識し得たこと
関係が始まった時期と、婚姻の時期の前後関係「独身だと信じていた」という説明の合理性を検証できる

重要なのは、これらは調査でしか得られないものばかりではないという点です。手元のやり取りの記録や、勤務先の関係、共通の知人の存在といった情報は、あなたがすでに持っている可能性があります。探偵に依頼する前に、いま何を持っているかを棚卸ししてください。足りないものが特定できて初めて、調査に何を頼むべきかが決まります。

求償権——不倫相手に全額払わせても、家計から出ていくことがある

もうひとつ、この論点と必ずセットで考えるべきことがあります。求償権です。セクション08でも触れましたが、ここで請求の設計と結びつけて整理します。

不倫相手にだけ全額を請求し、相手がそれを支払った場合、その不倫相手は、あなたの配偶者に対して「自分の負担分を超えて払った分」を請求できる可能性があります。婚姻を継続するつもりなら、その求償分は、実質的にあなたと同じ家計から出ていきます。

しかも、負担割合は必ずしも半々ではありません。公表された裁判例には、不倫相手の責任を副次的なものとした判断(東京高裁 昭和60年11月20日判決)、配偶者70対不倫相手30とした判断(東京地裁 平成16年9月3日判決)、配偶者60対不倫相手40とした判断(東京地裁 令和3年1月12日判決)があります。割合が動けば、手取りも動きます。200万円を不倫相手から回収しても、求償が7割なら、家計から140万円が出ていく計算になり得ます。

交渉の力学として知っておくこと実務では、示談の条件として「求償権の放棄」を盛り込むことがあります。ただし、これは無料ではありません。あなたが求償権の放棄を求めれば、相手方は「その代わり慰謝料を下げてほしい」と必ず交渉してきます。求償権の放棄は、相手方にとって最も使いやすい減額カードでもあるのです。この取引をどう設計するかで、手元に残る金額が変わります。
必ずお読みください「既婚と知っていたと言えるか」「求償をどう封じるか」「誰に、いくら請求するか」——これらは相互に絡み合っており、一般論では答えが出ません。個別の事案により結論は異なります。判断は弁護士にご確認ください。この記事の役割は、論点の存在を先に知ってもらうことまでです。

15弁護士費用の内訳と、手取りの一覧表

セクション10では「費用倒れは起こり得る」と構造だけを書きました。ここでは、弁護士費用の内訳を数字で開き、手取りまで引き算します。

弁護士費用の内訳(目安)

費目目安見落としやすい点
相談料0〜5,000円/30分初回無料の事務所が多い。無料の範囲(時間・回数)を確認する
着手金20万〜30万円結果に関係なく返金されない。慰謝料が1円も取れなくても支払い済みのまま
報酬金回収した金額の10〜20%「回収額」の定義(減額分を含むか等)を契約前に確認する
実費郵便代・印紙代・交通費など少額だが積み上がる
日当1万〜2万円/日最も見落とされる費目。事務所外での活動(出廷・出張)ごとに発生することがある

設定は事務所によって大きく異なります。「着手金無料・成功報酬のみ」という事務所もありますが、その場合は報酬金の割合が高めに設定されるのが通常です。どこかで必ず、リスクは配分されます。契約前に、この5費目をすべて書面で確認してください。

「慰謝料 − 弁護士費用 − 調査費用 = 手取り」

この引き算を1枚の表にします。着手金30万円、報酬金20%、調査費用50万円という条件で計算しました。調査費用の回収は、前セクションの裁判例を踏まえ、0円として計算します。これが最も安全な前提です。

回収した慰謝料着手金報酬金(20%)調査費用手取り
300万円▲30万円▲60万円▲50万円+160万円
200万円▲30万円▲40万円▲50万円+80万円
100万円▲30万円▲20万円▲50万円±0円
80万円▲30万円▲16万円▲50万円▲16万円(赤字)
50万円▲30万円▲10万円▲50万円▲40万円(赤字)
0円(証拠が取れなかった)▲50万円▲50万円(赤字)

慰謝料の相場は、離婚に至る場合で100万〜300万円、離婚しない場合で50万〜150万円程度が目安とされます。つまり、離婚しないケースは、この表の下半分に入りやすい。そして下半分は、赤字です。

費用倒れになる条件を、はっきり書きます

次の条件が重なるほど、収支は合わなくなります。

1
離婚しない慰謝料の水準が下がる(50万〜150万円)うえ、不倫相手から配偶者への求償を通じて、回収額の一部が同じ家計から出ていきます。この二重の目減りが、最も収支を壊します。
2
調査に長時間かけた調査費用が上がるだけでなく、裁判で「必要かつ相当」と評価されにくくなり、認容率まで下がるという二重の不利が生じます。
3
相手に支払能力がない判決を得ても現金は入りません。着手金と調査費用だけが確定した支出として残ります。調査を決める前に、相手の資力を確認してください。
4
増額を狙って調査を積み増す慰謝料の増額要素の多くは、婚姻期間・不貞の期間・妊娠の有無など、調査では変えられない事情です。調査で積み増せるのは不貞の回数・期間の立証だけ。20万円分の調査を追加して、慰謝料が20万円以上増える保証はどこにもありません。
無料相談でぶつけるべき一言「私のケースで、慰謝料の見込み額から、着手金・報酬金・調査費用を引いたとき、収支はどうなりそうですか」——この質問にまっすぐ答えてくれる相手を選んでください。「費用倒れの可能性が高いので慎重に」と言ってくれる事務所のほうが、信頼できます。
必ずお読みくださいこの表の数字は、公表されている相場・裁判例に基づく目安であり、あなたのケースの予測ではありません。個別の事案により結論は異なります。判断は弁護士にご確認ください。

FAQよくある質問

探偵に依頼せずに、自分で集めた証拠だけで慰謝料請求はできますか。
可能な場合があります。相手が不貞を認めた録音、肉体関係をうかがわせるメッセージ、ホテルの領収書など、手元の証拠だけで交渉に入れるケースもあります。判断のポイントは「不貞行為(肉体関係)を推認させる水準に届いているか」です。ここは素人判断が難しいため、まず弁護士の無料相談で「これで足りますか」と聞いてください。足りると言われれば、調査費用そのものが不要になります。
探偵が慰謝料の交渉までやってくれると言われました。頼んでいいですか。
交渉や訴訟の代理は弁護士の業務であり、探偵が依頼者の代理人として相手方と交渉することはできません。「うちで慰謝料請求まで全部やります」という説明は、法制度の枠組みからずれています。探偵が弁護士を紹介すること自体は問題ありませんし、実際に提携している事務所も多くあります。ただし、交渉するのはあくまで弁護士です。この点が曖昧な業者には、慎重に接してください。
時効の3年は、いつから数え始めるのですか。
損害および加害者を知った時から3年です。つまり「不貞の事実」と「相手が誰か」の両方を知った時点が起算点になります。別に、不法行為の時から20年という期間もあります。ただし、いつを「知った時」と評価するかは事案ごとに微妙な判断を含みます。うすうす感づいていた時期なのか、決定的に確認した時期なのか。ここは自己判断せず、必ず弁護士に確認してください。時効が近いと感じたら、証拠の有無にかかわらず先に相談すべきです。
探偵にかかった50万円は、慰謝料に上乗せして請求できますか。
調査費用が損害の一部として認められる場合はありますが、全額が認められるとは限らず、「必要かつ相当な範囲」に限定される傾向があります。調査が不貞の立証に実際に役立ったか、調査の範囲や時間が目的に対して合理的だったかが見られます。したがって、回収を前提に予算を組むのは危険です。調査費用は自分が負担するものとして計画し、一部でも認められたら上振れ、という構え方が現実的です。
離婚するかどうか決まっていません。それでも弁護士に相談していいですか。
まったく問題ありません。むしろ「決めていない」と伝えたうえで、離婚した場合と離婚しなかった場合の両方の見通しを聞くのが、いちばん実務的です。離婚するなら財産分与・養育費・親権も同時に設計することになり、慰謝料だけを見ていては判断を誤ります。離婚しないなら、示談書や誓約書という形で再発を抑止する設計になります。どちらの道も先に見てから決めるほうが、後悔が少なくなります。
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まだ依頼を決めなくて大丈夫です

証拠がまったくない段階なら、まず探偵の無料相談で「私の状況で調査は成立しますか」と聞いてみてください。成立しないと言われたら、それは50万円を守れたということです。総額はいくらか、成功の定義は何か、届出番号はあるか。話すだけでも、次に何をすべきかが整理できます。契約する義務は一切ありません。

無料相談してみる(24時間受付)

相談は無料です。その場で契約する義務はありません。特定商取引法により、断った相手への再勧誘は禁止されています。

まとめ

探偵は事実を「取る」人、弁護士は取った事実を「使う」人です。探偵はあなたの代理人にはなれず、交渉も訴訟もできません。そして、正しい順序は「探偵 → 弁護士」ではなく、「弁護士 → 探偵 → 弁護士」です。何がどれだけ必要かを先に確定させれば、調査時間の空振りが減り、費用が下がる可能性があります。最初の無料相談30分が、数十万円の差になることがあります。

  • 慰謝料の相場は、離婚あり100万〜300万円/別居100万〜200万円/離婚なし50万〜150万円(いずれも目安)
  • 時効は知った時から3年、または不法行為の時から20年。妊娠・出産・育児で数年経つのは珍しくない
  • 請求先は配偶者と不倫相手の両方。ただし二重取りはできず、求償の問題がある。ここは必ず弁護士へ
  • 探偵費用は損害の一部として認められる場合があるが、全額ではなく「相当な範囲」に限られる傾向
  • 着手金は結果が出なくても戻らない。慰謝料の見込みが小さいと費用倒れになりうる
  • 証拠がゼロなら探偵の無料相談へ、証拠が少しでもあるなら弁護士の無料相談へ。両方使ってよい

この記事は、地図です。答えではありません。慰謝料の金額も、請求先の設計も、離婚の可否も、すべてあなたの個別の事情によって結論が変わります。本記事は法律相談ではありません。個別の判断は、必ず弁護士にご確認ください。

それでも、地図があれば、少なくとも自分がどこに立っているかは分かります。証拠を取ることがゴールではなく、その先に何が待っているのかを知ったうえで、動くかどうかを決めてください。動かないと決めることも、正しい判断のひとつです。ただ、時効の3年だけは、あなたが立ち止まっているあいだも進み続けます。

そっと相談 浮気調査ナビ 編集部
探偵業法(警察庁)、国民生活センターの公表資料、裁判例および弁護士の公開解説を一次情報として確認しながら執筆しています。特定の探偵事務所からの依頼により記事内容を変更することはありません。本記事は情報提供を目的としたもので、法律相談・調査の受託ではありません。個別の判断は弁護士または探偵業届出済の事業者にご確認ください。
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