悪質な探偵の見分け方|探偵業法・届出番号・重要事項説明で確認する7項目
検索して出てくるのは、どれも「安心」「実績多数」「満足度No.1」。どこも同じに見えて、どこを信じていいか分からなくなった方へ。判断の軸は、口コミではありません。
悪質な探偵業者は、口コミや評判ではなく、探偵業法が定めた「法律の3点セット」で見分けられます。①公安委員会への届出番号があるか、②契約前に重要事項説明書面を交付して説明したか、③契約時に契約書面を交付したか。この3つは、事業者側の「義務」です。守れていない時点で、その業者は法律を守っていません。
口コミは操作できます。良い評判も、悪い評判も、書こうと思えば誰でも書けます。しかし、届出番号の有無と書面の交付は、感想ではなく事実です。感想で選ばず、事実で選んでください。
そのうえで、契約条件として④総額の提示、⑤「成功」の定義、⑥解約条件、⑦その場で契約を迫らないこと──の4項目を確認します。あわせて7項目。これがこの記事の全部です。
探偵業者に関する消費生活相談は、2007年度の1,210件から2016年度には7,660件へと増えました。約10年で6倍。警戒するのは、正しい感覚です。
「悪質 探偵 見分け方」と検索して、たどり着いたページの多くが、結局は探偵事務所自身が運営するページだった──そんな経験をしていませんか。そこに書かれているのは「弊社は違います」という話であって、業界を横断した判断基準ではありません。
この記事は、探偵事務所の宣伝ではありません。特定の事務所名は一つも出しません。代わりに、法律が事業者に義務づけている項目だけを並べます。あなたが電話口で、あるいは面談の席で、そのまま読み上げて確認できる7つの質問として整理しました。
- なぜ口コミ・評判で探偵を選んではいけないのか、その構造的な理由
- 探偵業法が事業者に課している義務は何か(守れていない=違法)
- 7項目それぞれの「良い答え」と「危険な答え」の具体例
- 結論:悪質業者は「口コミ」ではなく「法律の3点セット」で見分けられる
- なぜ口コミで判断してはいけないのか
- 探偵トラブルは増え続けている——相談件数は10年で約6倍
- 探偵業法とは何か——2007年施行の、依頼者を守るための法律
- 【チェック1】探偵業の届出番号があるか
- 【チェック2】契約前に「重要事項説明書面」を交付して説明したか
- 【チェック3】契約時に「契約書面」を交付したか
- 【チェック4】総額を提示するか——基本料金だけ言う業者は危険
- 【チェック5】「成功」の定義が契約書に書いてあるか
- 【チェック6】解約条件・キャンセル料が明示されているか
- 【チェック7】その場で契約を迫らないか
- それでもトラブルになったら——相談先と、返金交渉の現実
- 【新しい手口】SNSのDMで営業してくる「探偵」に注意
- 契約してしまった後でも、取り消せる場合がある
- よくある質問
- まとめ
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01結論:悪質業者は「口コミ」ではなく「法律の3点セット」で見分けられる

最初に、この記事の核心を書きます。探偵事務所を選ぶとき、多くの方がまず口コミサイトやランキング記事を探します。ですが、口コミは、悪質業者を見分ける道具としては致命的に弱いのです。理由は単純で、口コミは書き換えられるからです。
一方で、書き換えられないものがあります。法律が事業者に義務づけた行為です。探偵業法(正式には「探偵業の業務の適正化に関する法律」)は2007年に施行され、探偵業を営む事業者に対して、いくつかの明確な義務を課しました。この義務を果たしているかどうかは、感想ではなく事実として確認できます。
法律の3点セット——これだけで大半がふるいにかかる
まず押さえるべきは、次の3つです。この3つは事業者側の法的義務であり、依頼者のお願いではありません。「やってもらえたらありがたい」ではなく、「やらなければ法律違反」の領域です。
| 3点セット | 何を確認するか | 守られていない場合 |
|---|---|---|
| ①探偵業の届出番号 | 公安委員会への届出をしているか。番号がサイトや書面に明示されているか | 無届での営業は違法。この時点で候補から外す |
| ②重要事項説明書面 | 契約を結ぶ前に、重要事項を書面で交付し、説明を受けたか | 探偵業法上の義務違反。口頭説明のみは不可 |
| ③契約書面 | 契約を結ぶときに、契約内容を明らかにする書面を交付されたか | 探偵業法上の義務違反。書面のない契約は極めて危険 |
この3つが揃っていない業者は、それだけで選択肢から外して構いません。人柄がよかった、電話の対応が丁寧だった、料金が安かった──そうした印象は、この3点の前では判断材料になりません。
残りの4項目は「契約条件」の話
3点セットを通過した事業者に対して、次に確認するのが契約条件です。④総額を提示するか、⑤「成功」の定義が契約書に書いてあるか、⑥解約条件・キャンセル料が明示されているか、⑦その場で契約を迫らないか。これらは法定義務そのものではありませんが、トラブルが実際に起きているのは、ほぼこの4点です。
02なぜ口コミで判断してはいけないのか
「口コミも参考程度には見ていいのでは」と思うかもしれません。参考程度なら構いません。しかし、口コミを主要な判断軸にすると、悪質業者ほど選ばれやすくなるという逆転が起きます。この構造を先に理解してください。
口コミは三方向から汚染される
探偵ジャンルの口コミが信頼できない理由は、単に「サクラがいるから」というだけではありません。汚染の経路が、少なくとも三方向あります。
第一に、ステルスマーケティング・自作自演。良い評価は、書こうと思えば書けます。実際に依頼していない人間が、依頼者を装って高評価を投稿することは技術的に何の障壁もありません。景品表示法の運用でステマは規制対象になりましたが、規制されているということは、裏を返せば存在しているということです。
第二に、競合による中傷。逆方向の汚染です。まっとうに営業している事務所に、競合が悪評を書き込むこともあり得ます。良い口コミも悪い口コミも、どちらも信用の根拠になりません。
第三に、そして最も見落とされがちなのが、依頼者本人が真実を書けないという構造です。浮気調査の依頼は、人生で最も他人に言いたくない出来事の一つです。満足した人も落胆した人も、その多くは実名でレビューを書きません。最も参考になるはずの声が、構造的に表に出てこない。これが探偵ジャンルの口コミの限界です。
図1:この記事の背骨となる二分法です。左は他人の感想、右はあなた自身が確認できる事実。悪質業者を避けるために必要なのは、右側だけです。左側は、右側を通過した事務所を比べるときの参考程度にとどめてください。
「ランキング」も同じ理由で信じない
検索すると「おすすめ探偵ランキング」が大量に出てきます。順位の根拠が明示されているものは、ほとんどありません。順位を決めた基準が書かれていないランキングは、順位そのものに意味がないと考えて構いません。
03探偵トラブルは増え続けている——相談件数は10年で約6倍
警戒しすぎではないか、と自分を疑っている方もいるでしょう。都合の悪い数字も含めて、正直に出します。探偵業者をめぐる消費生活相談は、実際に急増しています。
国民生活センターに寄せられた探偵業者に関する消費生活相談の件数は、2007年度が1,210件。それが2014年度に3,199件、2015年度に4,308件、そして2016年度には7,660件へと増加したことが公表・報道されています。約10年で6倍以上という伸びです。
図2:探偵業者に関する消費生活相談件数の推移(国民生活センターの公表・報道による数値)。増加の背景には、探偵業法の周知が進んで相談窓口に声が届くようになった面もあります。ただ、どちらに解釈しても「無警戒で契約してよい業界」ではないという結論は変わりません。
相談の中身は2つに集中している
件数だけを見て怖がっても仕方がありません。大事なのは中身です。報告されている主要な相談類型は、次の2つに集中しています。
注目してほしいのは、どちらも「契約したあと」に起きているトラブルだということです。しつこい勧誘が不快だったという話ではありません。金銭的な損害が現実に発生しているのは、契約書にサインをしたその後です。
つまり、あなたが本当に警戒すべき瞬間は、電話をかけるときではなく、契約書にペンを持ったときです。そして、その契約書の中身を左右するのが、この記事で挙げる7項目です。なお、調査そのものが失敗して証拠が取れないケースについては、原因の多くが探偵の技術ではなく依頼者側の準備不足にあることも分かっています。探偵の調査が相手にバレる原因と、失敗しない探偵の見極め方も、あわせて確認しておくと全体像がつかめます。
04探偵業法とは何か——2007年施行の、依頼者を守るための法律
ここで、判断の土台となる法律を整理します。探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)は、2007年(平成19年)に施行されました。それ以前、探偵業には業務を規律する専用の法律がなく、誰でも看板を掲げられる状態でした。トラブルが多発したことを受けて作られたのが、この法律です。
重要なのは、この法律が探偵を取り締まるためではなく、依頼者を守るために作られたという点です。だからこそ、この法律の条文がそのまま「悪質業者の見分け方」になります。
探偵業者に義務づけられている主なこと
| 義務 | 内容 | 依頼者にとっての意味 |
|---|---|---|
| 届出 | 営業所ごとに、公安委員会へ探偵業の届出を行う | 無届の業者は違法。届出番号の有無が最初のふるい |
| 重要事項の説明 | 契約を結ぶ前に、重要事項を記した書面を交付して説明する | 契約前に、条件を紙で確認できる権利がある |
| 契約書面の交付 | 契約を結ぶ際に、契約内容を明らかにする書面を交付する | 「言った・言わない」を書面で潰せる |
| 守秘義務 | 業務上知り得た秘密を守る(退職後も含む運用) | 相談内容が外部に漏れない法的な裏づけ |
| 名簿の備付け | 調査員等について、法定の帳簿・名簿を備え置く | 誰が調査に当たったかを記録として管理する体制 |
さらに、法改正により、従来の「探偵業届出証明書」に代えて、営業所の見やすい場所に「標識」を掲示することが義務づけられる方向で制度が整理されつつあります。実務上の意味は変わりません。届出をしていることを、依頼者が目で確認できる状態にしておけということです。
義務の階層——絶対・重要・参考の3段
7項目には優先順位があります。すべてを同じ重さで見ると、判断が鈍ります。次の3階層で考えてください。
図3:上に行くほど絶対的な基準です。最上段の3つが1つでも欠ける業者は、下の2段がどれだけ良くても選んではいけません。逆に、最下段の「感じが良い」だけで選ぶのが、最も危険な選び方です。
この階層を意識すると、判断がぶれなくなります。たとえば「電話の対応がとても丁寧で、親身に話を聞いてくれた」というのは最下段の話です。最下段は、上2段を通過した事務所同士を比べるときにだけ使ってください。なお、最終的な成果物である報告書の質は、契約前には見えない部分です。だからこそ探偵の調査報告書が裁判で証拠になる条件と、認められないケースを先に知り、「どういう報告書を出してもらうか」を契約前に確認しておく必要があります。
05【チェック1】探偵業の届出番号があるか

7項目の1番目、そして最も基本的で、最も強力なふるいがこれです。探偵業を営むには、営業所ごとに公安委員会への届出が必要です。届出をせずに探偵業を営むことは、探偵業法に違反します。
確認方法は驚くほど簡単
難しいことは何もありません。ホームページの会社概要やフッター(ページ最下部)を見てください。届出番号は「東京都公安委員会 第○○○○○○○○○号」のような形式で記載されています。探偵業の届出をしている事業者は、この番号を隠す理由がありません。むしろ、信頼の証として堂々と掲載します。
サイトのどこを探しても番号が見つからない。電話で聞いても「あります」と言うだけで番号を答えない。この時点で、その事務所は候補から外して構いません。無届で営業している可能性があり、そうでなくとも、法定の表示すら整えていない事業者ということになります。
さらに、法改正の流れとして、営業所の見やすい場所への「標識」の掲示が義務づけられる方向にあります。面談で事務所を訪ねる機会があれば、壁の掲示を見てください。
それでも「届出があれば安全」ではない
正直に書きます。届出番号があることは、必要条件であって十分条件ではありません。届出は、審査に合格して与えられる「許可」ではなく、書類を出して受理される「届出」です。調査能力や料金の適正さが保証されるわけではありません。届出番号は「最低ライン」──ここを越えていない業者は論外、越えていてもまだスタート地点です。
06【チェック2】契約前に「重要事項説明書面」を交付して説明したか
ここが、この記事で最も重要なセクションかもしれません。探偵業者は、契約を締結する前に、依頼者に対して重要事項について書面を交付し、説明しなければなりません。これは探偵業法上の義務です。事業者の善意ではなく、法律で決まっています。
「契約前」であることに意味がある
なぜ「契約前」なのか。契約してから条件を知らされても、もう引き返せないからです。あなたが冷静に判断できる唯一のタイミング──それが、サインをする前です。だから法律は、その手前に書面の交付を置きました。
あなたはこの書面を読む権利があり、持ち帰って検討する権利があります。「その場で読んでその場でサイン」を強いる業者は、この義務の趣旨を無視しています。
図4:2つの書面は、時間軸のどこで渡されるかが違います。左の「重要事項説明書面」は契約より前。ここがあなたにとって最後の安全地帯です。この段階で条件を確認しきることが、右側のトラブルを防ぐ唯一の方法です。
この書面を出さない業者は、それだけで避けるべきです。調査能力がどうか、料金が安いかどうか、以前の問題です。法律で決められた書面を出さない事業者と、あなたは数十万円の契約を結ぼうとしているのです。
07【チェック3】契約時に「契約書面」を交付したか

3点セットの最後です。探偵業者は、契約を締結したときに、その契約内容を明らかにする書面を依頼者に交付しなければなりません。これも探偵業法上の義務です。
「言った・言わない」を潰すための書面
なぜ契約書面が必要なのか。トラブルの正体が、ほとんど「言った・言わない」だからです。「総額はこの金額と聞いていた」「いや、それは基本料金の話です」「証拠が取れなければ返金と言われた」「そのような約束はしていません」──こうした争いは、書面がなければ決着しません。そして、書面がない状態で不利になるのは、ほぼ確実に依頼者の側です。
契約書面を受け取ったら、口頭で聞いた説明と、書面に書いてある内容が一致しているかを照合する。ここまでやって初めて、書面は意味を持ちます。
契約書面で必ず目を通すべき箇所
08【チェック4】総額を提示するか——基本料金だけ言う業者は危険
ここからは契約条件の話に入ります。まずお金です。「基本料金」だけを答えて、総額を言わない業者は危険です。理由は、その差額が後から積み上がるからです。
「安すぎる見積もり」の正体
相場から整理します。浮気調査の料金は、調査員2名体制で1時間あたり1.5万〜2.5万円という形態が約64%を占めるとされています(業界調査による目安。事務所により異なります)。パック料金なら20時間で35万〜50万円程度が一つの相場感です。総額としては50万円前後が最頻値と言われます。
この相場に対して、極端に安い見積もりが出てきたとき、そこには理由があります。多くの場合、基本料金だけを提示し、それ以外を「実費」として後から積み上げる構造になっています。積み上げられる代表的な項目は、次のとおりです。
| 後から乗る項目 | 典型的な言われ方 | 事前に聞くべきこと |
|---|---|---|
| ガソリン代・車両費 | 「車両を出したので実費で」 | 車両を使う場合の費用は総額に含まれているか |
| 深夜・早朝手当 | 「深夜料金は割増になります」 | 何時から割増か。割増率は何%か |
| 報告書作成費 | 「報告書は別料金です」 | 報告書の作成費は含まれているか。何部までか |
| 機材費・撮影費 | 「特殊機材を使用したため」 | どの機材が別料金になるのか |
| 交通費・宿泊費 | 「対象者が遠方に移動したので」 | 移動が発生した場合の上限額はあるか |
| 諸経費(名目不明) | 「諸経費として一律○%」 | 諸経費の内訳と計算根拠は何か |
聞くべきはこの一文だけ
複雑に考える必要はありません。「私のケースの場合、最終的に支払う総額は、いくらからいくらの間になりますか」──この一文です。時間単価で答えられたら、「では合計は何万円ですか」と重ねてください。総額を出せない、あるいは出し渋る事業者とは、契約しないほうが安全です。
なお、総額が予算を超えたときに諦める必要はありません。調査時間そのものを圧縮して費用を下げる方法や、支払い方法を分ける選択肢が存在します。金額の壁にぶつかった方は、浮気調査の費用が払えないときの分割・後払いと料金の仕組みを先に読んでおくと、見積書の読み方そのものが変わります。
ここまで読んで「一度、相談だけしてみようか」と感じたら
迷っている段階こそ、無料相談で「自分のケースで調査が成立するのか」「今は動くべきか待つべきか」を確かめる価値があります。全国対応・相談は何度でも無料で、契約の義務はありません。話を聞いて、持ち帰って、比較して構いません。
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09【チェック5】「成功」の定義が契約書に書いてあるか
「成功報酬型だから安心」──この思い込みが、最も高くつくことがあります。成功報酬型の本当の争点は、料金体系ではなく「成功の定義」だからです。
定義が曖昧だと、証拠が取れなくても報酬が発生しうる
「成功したら報酬をお支払いいただきます」という契約で、「成功」が何を指すのかが書かれていなかったらどうなるでしょうか。決めるのは事業者側です。
「対象者の勤務先を特定できたので成功です」「ホテルに入る場面を確認できたので成功です(写真は不鮮明ですが)」──あなたが求めていたのは、慰謝料請求に使える証拠だったはずです。しかし契約書に定義がなければ、この主張を覆すのは容易ではありません。
「取れなかった場合」を嫌がらずに話すかを見る
誠実さの試金石は、ここにあります。証拠が取れなかった場合の話を、嫌がらずにしてくれるかどうかです。まっとうな事業者は、空振りがあり得ることを知っています。だから、そのときの精算をあらかじめ説明します。逆に、失敗の話を避けて成功の話ばかりする事業者は、成功しか売っていません。
実際、探偵に依頼しても証拠が取れないことはあります。着手金の扱い、経費の精算、追加調査の条件は事務所ごとに違います。探偵に依頼しても証拠が取れない場合の返金の実際と不成功の理由を先に押さえておくと、契約書の「成功」条項を読む目が変わります。
10【チェック6】解約条件・キャンセル料が明示されているか
国民生活センターへの相談で、最も多い類型の一つが「高額な解約料を請求された」です。にもかかわらず、契約前に解約条項を読む人は多くありません。なぜなら、契約するときに「やめること」を考えたくないからです。
しかし、解約条項こそが、契約書で最初に読むべき箇所です。順番を逆にしてください。
「すでに調査を開始している」という主張
報告されている典型的な手口を書きます。依頼者がキャンセルを申し出ると、事業者が「すでに調査を開始しています」と主張する。そして、実際には実施されていない部分についてまで、高額な解約料を請求される──という事例があります。
この主張が通ってしまう理由は明快です。「調査を開始した」の定義が、契約書に書かれていないからです。事前の打ち合わせをしたら開始なのか。調査員を手配したら開始なのか。実際に尾行を始めたら開始なのか。定義がなければ、事業者に有利な解釈が採用されます。
| 確認事項 | 良い契約書の書き方 | 危険な契約書の書き方 |
|---|---|---|
| 解約の可否 | 調査開始前・開始後それぞれの解約手続きが明記されている | 解約に関する記載がない、または「協議による」だけ |
| 精算の基準 | 実施済みの調査時間分+実費のみを請求する、と明記 | 「契約金額の○割」など、実施内容と無関係な定額 |
| 「開始」の定義 | 「調査員が現場で稼働を開始した時点」など具体的 | 定義なし(=事業者が自由に解釈できる) |
| 解約の方法 | 書面・メール等、記録が残る方法が指定されている | 電話のみ(=言った言わないになる) |
そもそも「解約するとき」を想像してから契約する
契約書にサインする前に、5秒でいいので「もし来週、事情が変わってやめたくなったら、いくら払うことになるのか」を自問してください。その答えが契約書のどこに書いてあるか、指で示せますか。示せないなら、まだサインするタイミングではありません。
11【チェック7】その場で契約を迫らないか

7項目の最後は、契約書の中身ではなく契約に至るまでの「態度」です。ここは、あなたが最も体感的に判断しやすい項目でもあります。
「今日契約すれば割引」は危険信号
「本日中にご契約いただければ、○万円お値引きします」「今なら調査員を確保できますが、来週になると空きがありません」「早く動かないと証拠が消えてしまいます」──こうした期限を切って判断を急がせる話法は、危険信号として扱ってください。
なぜ危険か。第一に、冷静な比較検討をさせないための時間圧力だからです。他社の見積もりを取られたら不利になる業者ほど、その場での決断を求めます。第二に、今日値引きできる金額は、最初から乗せられていた金額だからです。
図5:この分岐は、あなたが自分で作れます。「今日は契約しません」と言うだけで、事業者は自動的に左右どちらかに分かれます。テストとして、意図的に一度断ってみるという使い方もできます。
法律は、あなたの側に立っている
特定商取引法17条は、契約しない意思を示した相手への再勧誘を禁止しています。つまり、あなたが「契約しません」「必要ありません」と明確に伝えた瞬間から、その後の勧誘は法令違反の側に立ちます。
ここで注意すべきは、言葉の選び方です。「検討します」では、この線を越えられません。日常会話では拒絶の意味でも、法的には「まだ契約の意思を否定していない」と解釈される余地が残ります。断るなら、理由を添えず、「契約しません」「必要ありません」と言い切ってください。理由を言えば、その理由への反論が始まるだけです。
そして、この7項目を確認する場が、まさに無料相談です。相談は探偵に査定される場ではなく、あなたが探偵を面接する場です。探偵の無料相談で7項目を確認する方法と、勧誘されない相談の仕方を読んでから、この記事のチェックリストを手元に置いて臨んでください。2〜3社に同じ7問を投げれば、答えの差は驚くほどはっきり出ます。
12それでもトラブルになったら——相談先と、返金交渉の現実
7項目を確認しても、トラブルがゼロになるわけではありません。すでに契約してしまった方、すでに請求で揉めている方のために、現実的な対処を書きます。
最初の相談先は消費生活センター(局番なしの188)
契約や解約でトラブルになったとき、まず連絡すべきは消費生活センターの消費者ホットライン「188」です。局番なしでかかります。契約前の不安でも、契約後の紛争でも相談できます。相談は無料で、専門の相談員が助言をしてくれます。
相談するときは、次の3点をまとめておくと話が早く進みます。①契約書・重要事項説明書面などの書面一式、②事業者とのやり取りの記録、③請求されている金額とその根拠。書面がない、記録がない状態が、いちばん不利です。
クーリング・オフが使える場合がある
契約が締結された状況によっては、クーリング・オフの対象になる場合があります。適用の可否は契約の形態や場所によって変わるため、自己判断せず188または弁護士に確認してください。「もう無理だ」と諦める前に、まず制度の適用可能性を確認する。この順番が大事です。
弁護士に相談すべきライン
争っている金額が数十万円規模になり、事業者が話し合いに応じない場合は、弁護士への相談を検討する段階です。自治体の無料法律相談や法テラスの制度を使える場合もあります。あわせてやり取りを記録に残すことを今日から始めてください。電話で話したら直後に日時・担当者名・内容をメモする。それだけで証拠が一つ増えます。
そして、いちばん確実なのは「契約する前」
トラブルになってからの回復は、時間もかかり、全額が戻る保証もありません。最も費用対効果が高い防御は、契約する前の7項目の確認です。この記事を、サインする前に読んでいるなら、あなたはすでに最も有利な位置にいます。
13【新しい手口】SNSのDMで営業してくる「探偵」に注意
最後に、ここ数年で増えている経路について書いておきます。X(旧Twitter)やInstagramのダイレクトメッセージで、探偵を名乗るアカウントから営業をかけられるケースです。
「浮気」「離婚」といった言葉を投稿した人に対して、見知らぬアカウントからDMが届く。あるいは、SNS上で相談を持ちかけたら返信が来た。これは、この記事で書いてきた7つのチェック項目がすべて素通りされる経路です。
なぜ危険なのか
DMの受信設定で、見知らぬアカウントからの受信を制限しておくことも有効です。
正規の探偵事務所はSNSを使わないのか
そんなことはありません。届出をしている事務所も、公式アカウントで情報発信をしています。問題はSNSを使っていること自体ではなく、「営業所も届出番号も書面もないまま、DMだけで契約に持ち込もうとすること」です。
見分け方はシンプルです。この記事の7項目に戻ってください。
② 営業所の所在地を尋ね、公式サイトの存在を確認する
③ 重要事項説明書面を契約前に交付できるかを尋ねる(できないと言われたら、探偵業法違反です)
この3つに即答できない相手とは、それ以上やりとりをしないでください。あなたが今抱えている悩みは、その相手が付け込める種類の悩みです。
14契約してしまった後でも、取り消せる場合がある
ここまでの13章は、すべて「契約する前」に向けて書いてきました。しかし、この記事にたどり着く人の一定数は、すでに契約してしまった後です。署名した紙を前にして、「あのとき、なぜ断れなかったのか」と眠れずにいる人がいます。
その人に向けて、この章を置きます。業者選びを間違えたと気づいた後にも、まだ手は残っていることがあります。
分かれ目は「どこで契約したか」
探偵の調査は、特定商取引法が定める取引類型(訪問販売、特定継続的役務提供など)の対象になりうる役務です。法律上の整理は事案ごとに異なりますが、実務上いちばん効いてくる分かれ目は、契約書に署名した「場所」です。
事業者の営業所等以外の場所で申し込みや契約をした場合、それは訪問販売等にあたりうる——つまりクーリング・オフの対象になりうる、ということです。訪問販売等にあたる契約では、法定の契約書面を受け取った日から起算して8日以内であれば、理由を問わず、書面で契約を解除できるとされています。
思い出してください。あなたはどこで署名しましたか。事務所ではなく、喫茶店、ファミリーレストラン、ホテルのラウンジ、自宅、車の中——そういう場所だったなら、この論点は生きています。
書面不備は、あなたの側の武器になる
ここが、この記事の6章・7章と真正面からつながります。探偵業法は、契約前の「重要事項説明書面」と、契約時の「契約書面」の交付を事業者に義務づけています。これは努力目標ではなく、法律上の義務です。
では、その書面をもらっていなかったら。あるいは、渡されはしたが記載がスカスカだったら。多くの人はそこで「自分が確認しなかったのが悪い」と思い込みます。逆です。
クーリング・オフの8日間は「法定の契約書面を受け取った日」から起算します。したがって、その書面が交付されていない、または法律上必要な記載を欠いている場合、起算日がまだ到来していないと判断されうる——つまり、契約から日が経っていても、今から行使できる可能性が残る、ということです。
実際のADR事案では、契約書に「クーリング・オフはできない」と記載されていたことをもって書面不備による解除が可能とされたもの、契約日の誤記や調査範囲の記載不足・依頼者名の記入漏れを指摘され「今もなお解除が十分可能」とされたものがあります。
だから、手元の紙を捨てないでください。不備だらけの契約書ほど、価値があります。写真に撮り、封筒も、渡されたパンフレットも、やりとりしたメールやLINEの画面も、すべて残してください。
| 今日そろえるもの | なぜ必要か |
|---|---|
| 重要事項説明書面 | 交付されていない・署名が自分の字でない、といった点が争点になりうる |
| 契約書面(控え) | クーリング・オフの記載の有無・調査内容の記載の精度を確認する |
| 見積書・領収書・カード明細 | 実際に支払った額と、その時期を特定する |
| 契約した場所と日付のメモ | 営業所外での契約かどうかが、最初の分岐点になる |
| メール・LINE・通話のやりとり | 「絶対に取れる」等の説明があったか、解除を申し出た日はいつかを示す |
表:解除や返金を相談するとき、最初に聞かれるのがこの5点です。記憶が新しいうちに、契約した場所と日付だけでもメモしておいてください。
相談先は、探偵ではありません
ここは、12章で書いたことの繰り返しになりますが、繰り返す価値があります。探偵業者は、あなたの代理人として解約交渉や返金交渉を行うことはできません。国民生活センターも、公式にそう回答しています。「うちが先方に話をつけます」「うちの提携弁護士を紹介します」という申し出には、その一点で慎重になってください。
② 弁護士。金額が大きい、支払いを迫られている、相手が連絡を絶った——こうした場合は弁護士へ。法テラスの無料相談も利用できます。
最後に、正直な留保を書きます。ここに書いたのは「対象になりうる」「認められた事案がある」という事実であって、「あなたも必ず取り戻せる」という約束ではありません。和解が不成立に終わった事案も、和解が成立した後に事業者が支払わなかった事案も、実際に存在します。
それでも、書面を集めて188に電話するのに、費用はかかりません。泣き寝入りする前に、確かめる価値はあります。個別の判断は、消費生活センターまたは弁護士に確認してください。
FAQよくある質問
この7項目を、まず1社に聞いてみてください
悪質業者を避ける最も確実な方法は、口コミを読むことではなく、法律で決まった項目を自分の口で確認することです。届出番号はあるか。重要事項説明書面は出るか。総額はいくらか。無料相談は、そのための場です。答えを聞くだけなら費用はかかりませんし、その場で契約する義務もありません。同じ7問を2〜3社に投げれば、差ははっきり出ます。
無料相談してみる(24時間受付)相談は無料です。その場で契約する義務はありません。特定商取引法により、断った相手への再勧誘は禁止されています。
悪質な探偵業者を避けるために必要なのは、口コミを読み込むことではありません。探偵業法が事業者に義務づけた項目を、自分の口で確認することです。口コミは操作できますが、届出番号の有無と書面の交付は操作できません。感想ではなく、事実で選んでください。
- 法定義務(絶対):①公安委員会への届出番号がある ②契約前に重要事項説明書面を交付して説明する ③契約時に契約書面を交付する
- 契約条件(重要):④総額を提示する ⑤「成功」の定義が契約書に書いてある ⑥解約条件・キャンセル料が明示されている ⑦その場で契約を迫らない
- 対応の質(参考):話しやすさ、相性、評判。上2段を通過した事務所同士を比べるときにだけ使う
- 基本料金だけを言う業者は危険。ガソリン代・車両費・深夜手当・報告書作成費が後から積み上がる
- 「すでに調査を開始している」という主張で、実施していない部分にも解約料を請求される事例がある
- トラブルになったら、まず消費生活センター「188」。探偵は代理人として交渉できない
探偵業者に関する消費生活相談は、2007年度の1,210件から2016年度の7,660件へ、約10年で6倍に増えました。この数字は、あなたの警戒心が正しいことの裏づけです。ただし、トラブルの大半は「悪い評判の事務所を選んだから」起きたのではなく、契約書を読まずにサインしたから起きています。
7項目を書いた紙を1枚、手元に置いてください。それだけで、あなたは大半の落とし穴を避けられます。すべての質問に答えられる事務所が1社もなければ、それは相談が無駄だったのではなく、危険な契約を1つ回避したということです。
探偵業法(警察庁)、国民生活センターの公表資料、裁判例および弁護士の公開解説を一次情報として確認しながら執筆しています。特定の探偵事務所からの依頼により記事内容を変更することはありません。本記事は情報提供を目的としたもので、法律相談・調査の受託ではありません。個別の判断は弁護士または探偵業届出済の事業者にご確認ください。

